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風邪の初期症状を撃退!「風寒邪」に効く漢方薬の選び方と注意点
2024.2.14
11月5日のブログで、風邪症状に使う漢方薬について簡単に説明しましたが、その中の「風寒邪の風邪」に使う漢方薬について、もう少し詳しくご紹介したいと思います。
冬の寒さが深まるにつれ、風邪を引きやすくなる季節がやってきます。
特に「風寒邪」による風邪は、ぞくぞくする寒気や関節痛など、独特の初期症状を伴います。このような症状に効果的なのが、漢方薬による治療です。
漢方では、麻黄湯、桂麻各半湯、葛根湯などの方剤が風寒邪の風邪に推奨されています。これらの生薬は体を温め、発汗を促して風邪の症状を緩和します。
しかし、これらの漢方薬を選択する際には、自身の体質や現在の症状を考慮することが重要です。
『11/5のブログ | コロナ禍で風邪を引かないための効果的な漢方薬:症状別の選び方』へリンク→
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『風寒邪の風邪に効く漢方薬: 麻黄湯・桂麻各半湯・葛根湯の選び方と効果』
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寒さに当たると、体表は熱が逃げないように閉塞するので、鳥肌が立って汗が出なくなりますね。
風寒邪の風邪も、初期は汗が出ないことが多いです。
ですので、体表を温めて発汗させ、風寒邪を発散して除去する治療をします。
体表面を温める薬草は、麻黄、桂皮、生姜などがあり、特に麻黄は発汗作用に優れた生薬です。
この時に良く使われるのは、麻黄湯、桂麻各半湯(麻黄湯+桂枝湯)、葛根湯、麻黄附子細辛湯など、麻黄が入った方剤です。
どの方剤を使っても、風寒邪の風邪であることを見誤らなければ、大きな問題はないと思いますが、より的確に使うのであれば、コツがあります。
『冷え性改善のための養生法:東洋医学に基づく効果的な対策』へリンク→
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『麻黄湯の成分と効能: 風邪の初期症状に対する強力な発表剤とその使用法』
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麻黄湯はシンプルな方剤で、
麻黄4・杏仁4・桂皮3・甘草1.5が配合されています。
漢方薬の場合、薬味が少ないほど、各々の生薬の効き目が強く発揮されます。
麻黄は発散力(発表といいます)が強い生薬で、その作用を強くするために桂皮が入っており、麻黄湯は強い発表剤となります。
基本的には、長期に使う漢方薬ではなく、風邪の初期症状の寒気が緩和され、汗が出はじめたら服用を中止します。
汗をかきすぎると脱水などで体力が奪われるからです。服用期間は半日~1日くらいです。
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『桂麻各半湯の効果と適用:風邪から皮膚病まで対応する漢方の選択肢』
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桂麻各半湯は、麻黄湯と桂枝湯2種類の方剤を合わせて割ったものですので、
桂皮3.5・芍薬2・生姜1・甘草2・麻黄2・大棗2・杏仁2.5の生薬が配合されています。
比べてみると分かりますが、麻黄湯よりも麻黄の量は少なくなります。
桂皮も発汗作用があるのですが、麻黄と比べると弱く、また身体が弱っているときに体力を補うための大棗(なつめ)が入っています。
麻黄湯では発表作用が強すぎる場合や発汗が続かないので少し継続して使いたい場合に服用します。
この発表作用は、病邪を追い出すエネルギーにもなるので、風邪だけではなく、表皮に病邪がこもってしまうような皮膚病・・・
例えば、湿疹やじんましんなどの皮膚のかゆみに使う場合もあります。
しかし、発表することで一時的に皮膚病が悪化する場合もあり、その見極めは専門家でもかなり難しいです。
『咳の症状に使う漢方薬』へリンク→
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『葛根湯の全成分と効能:風邪、肩こり、筋肉のこりに対する最適な漢方選択』
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最も有名な風邪の漢方薬と言えば、葛根湯でしょう。
葛根湯は、葛根6・麻黄4・生姜1・大棗4・桂皮3・芍薬3・甘草2が配合されています。
麻黄湯と同じ量の麻黄が入っているので、発表作用は強めですが、大棗を入れることで体力が補えるようにしています。
葛根湯の名前でもある葛根は葛の根です。葛根と芍薬が首肩や背中のこわばり(筋肉のこり)をほぐす作用があります。寒気で肩や背中がこわばるときには麻黄湯よりも葛根湯の方が良いでしょう。
風邪とは関係なく、肩こりの緩和に使う場合もあり、良く効きますが、常用すると麻黄の作用で血圧が上がりやすくなるので、頼りすぎないようにしてください。(肩こり改善の漢方薬では、活血薬や理気薬などを使いますが、また別の機会に紹介したいと思います)
葛根は身近なところでは葛湯があります。
葛根湯の葛根と違って精製されていますので、同じ効能ではありませんが、葛湯はとても温まりますし、腹持ちが良いので、風邪の養生にオススメです。(馬鈴薯澱粉の葛湯が多いので、本当の葛粉が使われているか、表示を良く見て購入しましょう!)
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『麻黄附子細辛湯:冷え性と虚弱体質向けの温め効果と適切な使用シナリオ』
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麻黄附子細辛湯は、
麻黄3・細辛3・附子1が配合されており、麻黄湯よりも薬味が少ない処方です。
こちらはどのような人に使うかというと、日ごろから冷えて温める力がない体質に使います。
附子はトリカブトの塊根で、温裏薬と呼ばれる温める作用の強い生薬です。麻黄で発汗させようとしても、もともとの温める力がないので、うまく発表作用が働きません。
附子や細辛の温める働きの助けで、麻黄の効き目を発揮させています。
冷え性の高齢者や虚弱体質の人に使えるように、麻黄湯よりも麻黄の量を少なくしているのです。
似たような漢方薬ですが、麻黄湯はすぐに体を温めて発汗できる子供や比較的体力のある人、麻黄附子細辛湯は温める力もない虚弱体質の人に使うというイメージです。
また、麻黄が入った漢方薬では、動悸がしたり、眠れなくなる、強すぎると感じる方もいらっしゃいます。その場合は、桂枝湯(桂皮3・芍薬3・大棗4・生姜1・甘草2)を使います。
桂皮は麻黄と比べると発表作用は弱いのですが、交感神経を刺激しないので、動悸の副作用がありません。汗が出始めても寒気が続く場合にも発汗させすぎないので続けて服用できます。
カフェインに過敏な方も、桂枝湯の方がオススメです。
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『まとめ』
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以上の漢方薬が、風寒邪の風邪の初期に良く使われるものです。
風邪は証の移り変わりが早く、初期・中期・後期(回復期)と服用する漢方薬が変わることが多いです。
特に初期の段階で身体の変化に気づき、早く服用すれば、寝込まずに軽く済むことが多いので、これらの漢方薬を上手に使っていただけると病院にいく機会も減らせると思います。
そして重要なことがひとつ!身体を温めて病邪を追い出すのが目的の漢方薬ですから、服用した後は布団に入って温まり、汗をかきやすくすることが大切です。ですので、せっかく漢方薬を飲んでもその後、寒い中外出したり、冷たいアイスクリームを食べたりしては、漢方薬の効果が発揮できません。古来の書物にもきちんと服用後のことまで書かれています。
布団に入れない場合は、せめて冷えないように厚着して、じんわり汗をかくように気を付けてくださいね。
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長峯 友恵 NAGAMINE TOMOE
多くの方にご自身の自然治癒力で良くなるお手伝いができるように、漢方や養生でサポートしていきたいと思います。
薬剤師・国際中医専門員 統合医療生殖学会子宝カウンセラー / 薬膳アドバイザー / 皮膚細胞活性促進研究会認定カウンセラー / 可視総合光線療法研修終了 / 東京・山梨伝統生薬研究会所属 / 多摩中医薬研究会所属 / 統合医療生殖学会所属
この記事のライター
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nagare
ご相談までの流れ
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※病院のお薬をご利用中の方はお薬手帳をお持ちください。
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カウンセリング
お困りの症状を始め、お体の体調・体質など丁寧にお伺いします。
(初めてのご相談は30分~1時間程度)
ステップ2
漢方薬の調合
お伺いした体調・体質に合わせて薬草から調合します。
当薬局の煎じ薬はすべて手作りです。
(煎じ薬が苦手な方のために、粉薬や錠剤もございます。)
ステップ3
服用方法や養生法の説明
漢方薬の煎じ方、服用方法から普段の養生など、一人一人に合わせて説明いたします。
ステップ4
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飲み始めやご体調が不安定な方などは、こちらからも体調確認のお電話をさせていただくこともございます。
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