こだま堂漢方薬局

「多摩市の漢方薬局」「府中市の漢方薬局」漢方専門薬剤師が一人一人の体調・体質に合わせて漢方薬の調合をおこなっております。薬だけに頼らず、可視総合光線療法を取り入れ自己治癒力を高めることをモットーにしています。健康相談や健康食品・ハーブのお取り寄せもおこなっておりますのでお気軽にお立ち寄り下さい。

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男性の更年期障害

木曜日, 12月 5th, 2024

更年期障害というと、女性特有の症状と思われていますね。実は男性にも更年期障害があるのはご存じでしょうか?

男性の更年期障害も女性と同じく、体内の性ホルモンの低下によるものですが、女性と違って妊孕性のタイムリミットが決まっていないので個人差が大きく、ほとんど知られていないのが現状です。また、女性の場合は生理周期が乱れてくるなどの自覚症状があるので、そろそろ更年期だろうと自分で見当がつきやすいでしょう。

男性の更年期症状も女性のそれと似ていて、関節痛や筋肉痛、疲労感、発汗、不眠症、憂鬱、イライラする、不安感、精力減退などがあります。しかし、女性と違って体の変化が分かりにくいので、年のせいとか仕事の疲れかな?と思ったり、精神症状が強ければうつ病と誤診されてしまうこともあります。

厚生労働省の令和4年の統計によると、全体の自殺率としては男性が67.4%、女性が32.6%と男性の自殺率が女性の2倍となっています。年齢では男女ともに50~59歳が最も多く、男性の構成比として最も高くなるのは40~49歳で71.2%を占めるそうです。

40~50代は、男女共に更年期の年齢ですし、更年期障害に対して多くの治療の選択肢がある女性でも生活がままならないくらいの不調を訴える方が少なくないのです。男性の更年期障害が知られないままに無治療でいれば、男性の自殺率が女性と比べて異常に高いという結果がみられてもおかしくはないように感じます。

漢方の治療としては、保険診療では補中益気湯などの補気薬を用いることが多いのですが、中医学的には性ホルモンの低下は腎虚になりますので、補腎薬を用います。医療用の漢方薬には、本来の意味で補腎薬に当たるものがありません。そのため、値段は高価になりますが、鹿茸製剤など動物性生薬が配合された滋養強壮の漢方薬をつかうことになります。

性ホルモンの低下が著しい場合は、ホルモン補充療法の方が効果は早いです。しかし、効果が早い分、副作用もありますので、慎重に使用する必要があります。女性ホルモンの補充は、飲み薬や貼り薬、膣錠など様々な剤型があるのですが、男性ホルモンの補充には、病院では注射剤しかなく、他、市販の第一類医薬品の飲み薬・塗り薬しか選択肢がありません。

通常は月に1~2回、または週に1回毎に筋注して補充します。基本的には少量をこまめに投与することが推奨されます。1回のホルモン補充量が多くなってしまうと血中の男性ホルモンの量が生理的レベルを超えてしまいますし、投与間隔が長いと次の投与までに低くなりすぎて、血中ホルモン値の振れ幅が大きくなり、身体がその変化に対応しづらいからです。

その点、市販のホルモン剤は少量ずつ定期的に補充ができるメリットがあります。注射剤と比べて毎日補充しながら少しずつ血中濃度を上げていくので激しい変動がありません。調子が良くなってきたら、徐々に量や頻度を減らしていきます。注意点としては、前立腺肥大症など男性ホルモンで悪化する病気の方は利用できません。若いころよりも尿の出が悪くなってきた方は、健康診断のPSA(前立腺特異抗原)の数値が高くなっていないか確認してください。

 

こだま堂では12月から第一類医薬品の男性ホルモン製剤(内服・外用)を取り扱いを始めました。男性ホルモン製剤というと、精力増強薬という印象があり、そのようなご相談があまりないこともあって取り扱っていなかったのですが、思い返せば、今までのご相談の中に男性更年期障害に当てはまる方がいらしたたことに気づきました。ホルモン剤というと、作用が強そうで不安になる方もいらっしゃると思いますので、正しく安全に利用できるようにサポートします。男性の更年期障害でお悩みの方はお気軽にご相談ください。

 

【男性更年期セルフチェック】

▢総合的に調子が思わしくない

▢関節や筋肉の痛み

▢ひどい発汗

▢睡眠の悩み

▢よく眠くなる・しばしば疲れを感じる

▢イライラする

▢神経質になった

▢不安感

▢体の疲労や行動力の減退

▢筋力の低下

▢憂鬱な気分

▢絶頂期を過ぎたと感じる

▢力尽きた・どん底にいると感じる

▢ひげの伸びが遅くなった

▢性的能力の衰え

▢早朝勃起の回数の減少

▢性欲の低下

当てはまる項目が多い方は要注意です。

 

漢方が役立つ子どもの体調不良

日曜日, 12月 1st, 2024

ポリファーマシーという言葉を聞いたことがあるでしょうか?薬の多剤併用による有害事象のことを指します。

元々は、年齢と共に病気が増え、その治療薬による多剤併用が問題視されていたので、高齢者についてのポリファーマシーが研究対象とされてきました。しかし、近年は子どもの医療費無償化もあり、小児のポリファーマシーが指摘されるようになっています。

ちょっと鼻水が出る、咳をしている、そのくらいで簡単に病院にかかり、薬を飲ませていませんか?風邪の原因はほとんどがウイルス性なので、抗生物質を服用する意味はありません。それどころか、むやみに抗生物質を利用することで、健康な腸内細菌叢が破壊され、薬剤耐性菌を増やし、より治りにくい病気を増やす温床になってしまいます。

子どもは風邪を引きながら免疫力を鍛えていきます。生まれた瞬間からお母さんの菌や身の回りの菌を取り込んで、悪さをする菌と有用な菌を選別する能力を鍛えながら成長していきます。風邪を引くのは当たり前なので、喘息などの持病がなく、症状が軽ければ慌てて薬を飲ませる必要はありません。

それでも、他の子より風邪を引きやすい、成長が遅い、好き嫌いが多くてきちんと栄養が取れない・・・などのお悩みをもつ親御さんも少なくないと思います。

そんなときには、是非漢方薬も検討してみて下さい。お薬の漢方薬だけではなく、東洋医学の養生も含めて、子どもの体質改善に役立つはずです。

 

【風邪を引きやすい・虚弱体質など】

風邪を引いたときと、風邪を引いてないときに体質改善で服用する漢方薬は同じではありません。まずは虚弱体質の改善に使う漢方薬を紹介します。

≪小建中湯≫ 桂皮・生姜・大棗・芍薬・甘草・膠飴

この漢方薬の優れたところは、子どもの虚弱体質の改善に非常に幅広く使うことができ、しかも飲みやすいことです。膠飴は麦芽糖の飴玉のことで、薬草を煎じた湯液の中に溶かして使います。なので、甘みがあり、生姜湯のような美味しい漢方薬です。虚弱体質全般、胃腸が弱い、便秘しやすい、夜泣き、神経質、夜尿症など子どものお悩みのほとんどに使えると言ってもいいかもしれません。子どもはガマンして薬を飲むことは苦手ですから、飲みやすいのは大きなメリットです。「他の方剤にしようかな・・・」と多少思いつつも、飲みやすさを重視して、小建中湯を使うということはよくあります。

≪瓊玉膏≫ 生地黄・人参・茯苓・枸杞子・沈香・ハチミツ

こちらは、こしあんのような甘くて美味しいおやつのような漢方薬です。味だけで比較すれば、小建中湯よりも美味しいでしょう。生地黄が入っているので、下痢をしやすい体質には向きませんが、虚弱体質の改善には最適です。添付文書の適応が8歳からになりますので、小さなお子様がご利用できないのは残念です。

※風邪をひいたときの漢方薬の選び方は、基本的には大人の場合と同じです。症状によりますので、ご相談ください。

 

【疳の虫・夜泣き】

疳の虫とは、昔の人が子供がわめいたり、ぐずったりするのを体の中にいる虫のせいと考えていた名残りです。子供は大人のように言葉で気持ちや体調についてうまく説明することができないので、何かの不調のサインである場合もあります。また、栄養不足でも夜泣きや疳の虫が出てくる場合がありますので、特に離乳食への切り替えから栄養が偏ってないかも見直してみてください。

≪抑肝散≫ 当帰・川芎・茯苓・白朮・柴胡・甘草・釣藤鈎

この漢方薬は昔から疳の虫によく使われてきた処方で、特に育児疲れのお母さんと一緒に服用「母子同服」することで知られています。抑肝散はイライラを穏やかにしますので、親子で飲むことでより効果が発揮されるのです。苦い薬草は入っていませんが、当帰や川芎は独特の香りがあります。上記で紹介したような美味しい漢方薬ではありませんが、飲めない子は少ないように感じます。

※漢方薬を飲みやすくする方法

子供に薬を飲ませる場合、飲み物や服薬ゼリー、アイスクリームなどに混ぜて飲ませることが多いと思います。漢方薬の場合、酸味と相性が悪いので、フルーツ系の味と混ぜると余計にまずくなります。相性が良いのは、ほんのり苦みがあり良い香りのココア味やチョコレート味で、漢方薬用の服薬ゼリーにもチョコレート味が多いのはそのような理由からです。服薬ゼリーを使わなくてもココアパウダーを少し入れることで飲みやすくなります。ただし、体質によってはココアやチョコレートが悪影響を与えることがあるので、大量には使わない方がよいです。

 

【夜尿症】

小学生・中学生になってもおねしょが良くならないという相談は意外と多いです。東洋医学的には先天の精が不足していて、腎が弱い体質と考えられます。精は生命力の源なので、不足すると虚弱体質になったり、成長発達や歯の抜け変わりが遅いといった症状も伴うことがあります。食養生では、魚介類やスッポン、骨のスープなどが腎の栄養補給におすすめです。また、精神的なストレスから起こる夜尿症もあります。夜尿症で子供を叱ってしまうと余計に治らなくなります。無意識に夜尿になってしまうのですから、本人が一番悩んでいます。怒らずに見守ってあげてください。

≪六味地黄丸≫ 地黄・山茱萸・山薬・沢瀉・茯苓・牡丹皮

効能・効果は「疲れやすくて尿量減少または多尿で、ときに口渇があるものの次の諸症:排尿困難・頻尿・むくみ・かゆみ」となっていて、現代では高齢者によく使われる方剤ですが、もともとは小児の腎症にもちいる処方でした。〇〇地黄丸はいくつか種類がありますが、そのベースとなるのが六味地黄丸です。補腎薬としては比較的穏やかな漢方薬なので、明らかに腎虚の症状がある場合、もっと補腎作用が強い生薬を使う必要があります。

≪桂枝加竜骨牡蠣湯≫ 桂皮・芍薬・大棗・生姜・甘草・竜骨・牡蠣

夜尿症以外に神経質・不眠症・夜泣き・眼精疲労などにも使われる漢方薬です。補腎の漢方薬ではなく、気が不安定で興奮しやすい体質に用います。竜骨・牡蛎は浮ついた気を降ろす作用の他、収斂固渋作用があり、体液が漏れ出るのを防止します。

 

ここで紹介した以外にも様々な漢方薬が子供の体質改善に役立つと思います。治療薬で病気を治すことだけではなくて、身体そのものを強化していくことに貢献できるのが漢方薬のメリットです。

 

1月の臨時休業

日曜日, 12月 1st, 2024

1月の臨時休業

聖蹟桜ヶ丘・府中店共に

1月1日(水)~5日(日)、12日(月)はお休みです。

府中店のみ19日(日)お休みです。

ご迷惑おかけしますが、よろしくお願いいたします。

生理痛に使う漢方薬

土曜日, 11月 9th, 2024

生理痛があるのは普通のこと・・・と思っている方は多いですが、東洋医学的には生理痛はないのが正常です。

生理痛の体質にもいくつかありますので、漢方薬を使う際にはその体質に合ったものを使ってください。ここでは、よく使われる漢方薬を紹介してみたいと思います。(ここで紹介したものが全てではありません)

 

【瘀血証に使う漢方薬】

 瘀血証は古血が滞った病態で、さまざまな慢性病の原因となります。婦人科では瘀血によって、子宮の血行不良を起こしたり、組織の癒着、筋腫のような塊ができます。瘀血証にも細かく分類すると、気滞を伴う気滞血瘀、気虚で血が流れない気虚血瘀、瘀血なのに血も足りない血虚瘀血、痰湿が血流を阻害している痰湿血瘀などがありますので、体質に合わせて組み合わせる場合が多いです。

≪桂枝茯苓丸≫ 桂枝・茯苓・牡丹皮・桃仁・芍薬

 瘀血証に使う代表的な漢方薬です。寒性の活血薬である牡丹皮が配合されているので、全身冷えている人よりは、冷えのぼせの体質に向いています。臨床ではこの処方単体で使うというよりも、他の処方と合わせて活血を強める目的で使うことが多いです。茯苓には利湿作用があるので、瘀血と水分代謝が悪い体質の方に向く処方です。

≪桃核承気湯≫ 桃仁・桂皮・甘草・芒硝(硫酸マグネシウム)・大黄

 桂枝茯苓丸の体質よりも瘀血症状が強く、便秘がちな方に使う漢方薬です。桃核承気湯には、下剤の作用がある大黄が入っていますが、便秘があると直腸内の糞便が子宮周辺部の組織を圧迫して瘀血を起こしますので、通便させると痛みが楽になります。体質改善のために長期で飲むという処方ではなく、通便後に痛みが軽くなったら、桂枝茯苓丸などの下剤が入っていない処方に切り替えます。桃核承気湯と似たような体質に使う漢方薬には、他に通導散(当帰・大黄・芒硝・枳実・厚朴・陳皮・木通・紅花・甘草・蘇木)などがあります。通導散には、気を巡らせる生薬が配合されていて、気滞血瘀に使われます。

≪折衝飲≫ 桃仁・紅花・牛膝・牡丹皮・芍薬・当帰・川芎・延胡索・桂枝

 折衝飲は気を巡らせる利気薬と活血薬の組み合わせで、瘀血を去る配合です。当帰を加えることで補血作用もあります。通導散のように下剤の作用もなく、幅広い瘀血症に使えるバランスの良い方剤ですが、残念ながらあまり知られていません。恐らく、エキス顆粒が製造されておらず、煎じ薬限定になってしまうからだと思いますが、味も比較的飲みやすいので、もっと見直されてもよい方剤です。似た方剤には、牛膝散があり、これは折衝飲から紅花・川芎を抜き、木香を加えた方剤です。作用的に大きな違いはありませんが、折衝飲より少し活血作用を弱め、木香で利気作用を強めたと言えるでしょう。折衝飲により多くの生薬を足したのが芎帰調血飲第一加減で、香附子・烏薬・陳皮・乾姜・白朮・茯苓・大棗・炙甘草・枳実・木香・益母草を加えたものです。生薬がたくさん入っていると作用が強い薬のように感じられますが、脾虚を補う生薬を足しているので、より虚弱者に用いる活血薬になります。

 

【血虚証に使う漢方薬】

 血虚証は文字通り血が足りない体質です。現代医学で言う貧血とも似ていますが、検査で貧血を指摘されなくても血虚証に当てはまる方はたくさんいます。まぶたの裏や舌が白っぽい、肌つやが悪い、髪が抜けやすい、爪が弱い、生理の後半に体調不良が多いなどの特徴があります。血虚が主な体質でも同時に瘀血症の方もいますので、生理痛の場合、活血作用の生薬も少量は組み合わせることが多いです。

≪四物湯≫ 当帰・芍薬・川芎・地黄

 四物湯は基本の補血薬で、様々な補血作用がある漢方薬のベースになっています。この中で川芎だけは補血薬ではなく、活血薬になりますが、3つの補血薬と組み合わせることで新しい血を補って巡らせるという目的があります。四物湯だけで使う場合もありますが、血虚証の人は同時に脾気虚などを伴う場合があり、若干消化に重い地黄が入っているので、白朮や陳皮などと合わせて消化吸収しやすくして使うことも多いです。例えば、十全大補湯は四物湯に人参・白朮・茯苓・桂皮・甘草を加えた方剤で、気血不足の体質に用います。他、生理周期の不定愁訴に使われる加味逍遙散に四物湯を足した加味逍遙散合四物湯は、加味逍遙散の体質よりも血虚の症状が強い方に用いられます。瘀血の血虚証に用いる桃紅四物湯は四物湯に桃仁・紅花を加えた処方です。このように様々な方剤の補血薬としてのベースに使われるのが四物湯なのです。

≪当帰芍薬散≫ 当帰・芍薬・川芎・茯苓・沢瀉・蒼朮(白朮)

 婦人薬として最も知られている漢方薬です。血虚証にむくみやすいなどの水滞症状を伴う体質に用いられます。四物湯に含まれる地黄は滋潤作用があり、茯苓・沢瀉・蒼朮の利湿作用を妨げるので入っていません。当帰芍薬散には、水性抽出エキスの当帰芍薬散料と薬草そのものの粉末を用いる当帰芍薬散がありますが、薬草の配合比が異なり、古典に忠実なのは当帰芍薬散になります。経験的には、水分代謝を改善する利湿作用は、当帰芍薬散の方が優れているように感じます。水滞症状があまり無い方には、当帰芍薬散から茯苓・沢瀉を抜き、黄芩を加えた当帰散を用います。どちらも妊娠中の安胎薬としても用いられる方剤です。昭和の有名な漢方治療家、荒木性次氏は当帰散について「お産を軽く済まし得ること神の如し」と推奨されています。妊娠中はお薬の服用について慎重になる方が多いですが、漢方薬の中にはとても役立つ方剤もあるのです。

 生理痛の改善の目安は、漢方薬を服用してほとんどの方が3ヶ月以内に効果を感じられると思います。ただし、生理の直前から飲み始めた場合、瘀血が溜まった状態で生理が始まるため、いつもより痛みが強く感じられることもあります。生理痛が重い方は、できれば2週間以上前から飲み始めた方が良いかもしれません。1回目の生理が重くても、2回目からは軽くなりますので、不安に思わずに続けてください。

 生理痛は軽度~中程度の方なら、半年しっかり飲めばかなり良くなります。今まで半年以上きちんと服用しても効果が全く無かった方は、ごく数名です。治りにくいケースは「子宮腺筋症」「子宮内膜症」の症状が進んだ方でした。しかし、そのようなご病気があっても、ほとんどの方は漢方薬を服用する前よりも症状は軽くなっています。生理痛でお悩みの方は是非漢方薬を服用してみてください。(ただし、飲んだり飲まなかったりでは良くならないので、毎日真面目に服用することが大切です!)

12月の臨時休業

水曜日, 10月 23rd, 2024

12月の臨時休業

聖蹟桜ヶ丘店・府中店共に

8日(日)、9日(月)、23日(月)、29日(日)、30日(月)はお休みです。

5日(木)は、14時からの営業となります。

※年末年始は12/29~1/5がお休みになります。

東洋医学で考える痛みの分類

土曜日, 10月 5th, 2024

現代医学では、痛みの対応として「解熱鎮痛薬」の使用が一般的です。

もちろん、痛みにもいろいろな原因がありますので、リウマチなどの膠原病の炎症にはステロイドを使ったり、片頭痛なら血管を収縮させる薬、運動器の痛みに麻酔薬を打つブロック注射など様々な治療方法があります。

東洋医学では、痛みの分類の仕方が独特で、患者さんの感覚を重視します。それについて分かりやすく説明したいと思います。

まず一つ目に重要なことは「温める」「冷やす」で痛みの具合がどのように変化するかということです。例えば、お風呂に入ると痛みが楽になる、逆に痛みが増すといった感覚です。もしくは患部に熱感があるかどうかも参考になります。温めると楽になる痛みは温性や熱性の薬草を使って痛みを緩和させ、温めると痛む場合には涼性や寒性の薬草を使う必要があります。温めても冷やしてもどちらも変わらない場合は、そこまで寒熱を考慮せず薬草を使うこともあります。(または寒熱夾雑証もあります)もし温めると痛みが増す症状に、熱性の漢方薬を使ったら大変なことになります。この寒熱を判別することは非常に重要なのです。

二つ目は「虚」「実」です。虚実の判別には二通りの考え方があり、一つは痛みの強さで、突然起こる激しい痛みは実であることが多く、慢性化してジワジワ痛むような鈍痛は虚の痛みが多いです。もう一つは気血津液の停滞か不足かの判別です。押すと痛みが増す(拒按)、圧迫感がある、しこりがあるなどは「不通則痛(ふつうそくつう)」と言われる気血津液の流れが悪く滞っていることが原因と考えます。この場合は実の痛みです。押すと気持ちが良い(喜按)、患部が軟弱、疲れると悪化する、女性であれば生理後半や生理後に起こりやすい症状などは「不栄則痛(ふえいそくつう)」と言って、患部に栄養が足りないことが修復不良を起こし、痛みが起こると考えますので、虚になります。

この「寒熱」「虚実」は痛みに限らずどんな症状に対しても重要な分析になりますが、同じ病気の痛みでもこの体質が異なれば使う漢方薬も違うということです。そして同じ人でも経過とともに「証」が変わる場合もあるので、ずっと同じ漢方薬でよいとも限りません。

例えば「実」に使う漢方薬は長期に使うと巡らせすぎて体質が「虚」に変化してしまう場合もありますし、はじめは清熱薬で良かった症状も冷やしすぎると良くない場合もあるので、注意が必要です。

がんの漢方相談

金曜日, 9月 13th, 2024

「がんに効く漢方はありますか?」と、ご質問を受けることがよくあります。

例えば、抗腫瘍作用が確認されている薬草などはありますが、あくまでも研究・実験段階ですので、がんに効果があると断言するのは残念ながら難しいでしょう。あくまでもがんをやっつけるのは抗がん剤などの現代医学が第一選択ですので、「がんが消えた!」などの宣伝で、貴重な治療時期を逃さないようにしてほしいと思います。そのような漢方や健康食品は、現代医学の治療を妨げない範囲で補助的にご利用されるのが良いと考えています。

実際に漢方薬が利用される多くの目的は、体調管理や抗がん剤による副作用の軽減です。

よく使われているものとしては、食欲を回復させる「六君子湯」、元気をつける「補中益気湯」、抗がん剤の副作用のしびれに「牛車腎気丸」などがあります。これらはがんを治すものではありませんが、治療の副作用や不快感を軽減することで、役に立つ漢方薬で、病院でも積極的に使われています。

がん治療では、がんそのものをやっつけることに意識が向きがちですが、食欲や体力を保つことはより重要です。食欲や体力があれば侵襲性の強い治療にも耐えられる確率が上がりますし、途中で治療を中断せずにやりきることができます。

また、積極的ながん治療ができなくなってしまったとき、病院から見捨てられたように感じてガックリきてしまう方は多いですが、食欲や体力が維持できれば、元気で過ごせる期間が長くなって、本来の寿命までがんと付き合いながら生きていくことができる方もいらっしゃいます。

「がんでは死なないがん患者」の著者、東口高志医師によると、余命1か月ほどの末期と考えられるがん患者さんに適切な栄養療法を施したところ、それ以上良くならない患者さんは17.6%で、残りの82.4%の方は栄養管理が不適切だったせいで、栄養失調に陥っていたと書かれています。がんの末期に多く見られる「悪液質」は、栄養不良による衰弱です。一昔前までは、栄養を摂るとがんが大きくなると考えられていて、断食療法など極端な栄養制限が流行っていたこともありました。しかし、がんの治療で体力が落ちた方が断食を行ってしまい、痩せて余計に体力が無くなってしまった方がたくさんいらっしゃいますので、安易に行うべきではありません。

がんの多くは解糖系と呼ばれる糖代謝でエネルギーを得るので、大量にグルコースを消費します。(その性質を利用した検査が放射性同位体グルコースを用いるPET検査です)断食をすることで、糖分を絶つという意味では全く意味が無いものではなかったのかもしれませんが、最近では糖質を制限しながら、ケトン体代謝にするために中鎖脂肪酸などを摂取する食事療法が考案されています。適切な栄養を摂りながら、解糖系に頼らない代謝経路でエネルギーを生産するミトコンドリアを活性化させる方法は、医学的にも根拠があり、患者さんの体力的にも負担が少なく有望な食事療法ではないかと思います。

興味深いことに、がん細胞にはミトコンドリアが少なくなっていて、細胞の自然死であるアポトーシスを誘導するメカニズムにミトコンドリアの機能が関わっていたことが分かってきました。つまりミトコンドリアの働きが悪くなったことががん細胞の増殖を手助けしている可能性があるのです。

適切な栄養を摂って、ミトコンドリアを増やし活性化することは、体力的にも精神的にも元気にもなりますし、副作用もありません。健康になるための食事・栄養補給ですので、生活を共にする家族にとっても一緒に実践しやすいのではないでしょうか?

がんになったとたん、いろいろな健康法を紹介されて辟易するという話を良く聞きます。物珍しい健康法よりも、まずは基本の健康をよくするための当たり前の生活習慣を見直すことから始めるようにしましょう。

月経前症候群(PMS)と漢方

金曜日, 8月 23rd, 2024

毎月生理前になると憂鬱になる方も多いのでは無いでしょうか。

本来、PMSや生理痛が無いのが健康な状態です。

 

漢方医学では、PMSの原因を「気・血・水」のバランスの乱れと考えています。 特に、血液循環の異常は、瘀血(おけつ)と言って、血の巡りが悪いことによって引き起こされたり、血虚(けっきょ)と言って血の不足が絡んでいたり、気の異常は、気滞や気逆と言って、気の滞りによって鬱々とした状態や、気の逆上によってイライラなどが起こったり、水の滞り(水滞)によってむくみが生じたりと、からだのバランスの乱れが関係しています。

 

PMSによく使用される漢方薬と言えば、当帰芍薬散や加味逍遙散です。しかし、日本人は胃腸が弱い方も多く、他の漢方薬の方が良いケースが多くあります。体質や体調も一人一人違いますので、同じPMSの症状でも、漢方薬の配合は一人一人違って来る場合がほとんどです。

漢方では、気血水の乱れた体質を整えていき、PMSが起こりにくい身体にバランスを整えていきますので、その場しのぎの即効性を求める対処療法ではなく、根本的な改善を目指していきます。もし辛い症状がある場合には、中には即効性の漢方薬もありますので、体調などをお伺いしながら、適宜使い分けて行きます。

PMSは仕方ないと諦めている方、その場しのぎでその時だけお薬を服用しているも多くいらっしゃいますが、毎月何十年もお付き合いをしていかなくてはなりませんので、ひどくならないうちに身体のバランスを整えて、気持ちのよい毎日を送っていきませんか。

疲れが取れない

火曜日, 8月 20th, 2024

疲れが取れないのは、漢方医学では主に「気」と「血」の不足に着目してアプローチします。以下に、漢方の観点から疲労回復のための方法とその際に使用する漢方薬をご紹介します。

漢方医学における疲労の捉え方

漢方医学では、疲労を「気」と「血」の不足によるものと考えます。

 

気の不足には、主に高麗人参が配合された漢方薬を使用することが多いのですが、ストレスが多くて気が詰まりやすいタイプの方には使えませんので、体調に合わせて他の補気薬を配合した漢方薬を使用していきます。補気薬の代表的な漢方薬は補中益気湯です。

 

血の不足には、血を補うとされる当帰(とうき)や地黄(じおう)が配合された漢方薬を主に使用していきます。その他、血不足が強い場合には、鹿茸(ろくじょう)といった、鹿の角を使った動物性の漢方薬を使用していく場合もあります。

動物性の漢方薬を使いたくない方には、他の方法などもご提案していきます。

一般的によく使用されているのは当帰芍薬散ですが、当帰芍薬散は、血を補う当帰は少量の配合で、むくみを改善する利水薬が主な配合になりますので不向きです。血を補うのをメインで考えていく場合には、他の漢方薬の方が断然向いています。

 

気血が両方不足している場合には、気も血も両方補える漢方薬を使用していきます。

 

また、生活習慣の改善もとても大切になりますので、無理の無い範囲で行って見て下さい。

漢方薬の服用と併せて、以下のような生活習慣の改善も重要になります

 

運動をすると逆に悪化する場合には、まずは身体を立て直して元気になってきてから、少しずつ行っていくと良いでしょう。

(長峯輝明)

東洋医学で考える体質の意味

火曜日, 7月 9th, 2024

漢方薬と言えば、「体質改善で身体を治していく」というイメージをお持ちの方が多いと思います。

それは、ある意味では正しくもあり、別の意味ではちょっと違うということがありますので、漢方で考える体質について分かりやすく解説してみたいと思います。

例えば、〇〇湯という漢方薬が体質に合う・合わないという言い方をする方がいらっしゃいます。この場合の体質というのが、「生まれ持ったもともとの体質」のイメージで捉える方が多いのですが、そうではありません。東洋医学では、「体質と症状」を合わせて「証」というのが漢方薬の合う・合わないを示す体質です。この「証」は病気によってはめまぐるしく変化することもあり、漢方薬を使うタイミングがずれると効果が無かったり、合わなかったりすることがあります。

「証」が短期間に変化しやすい代表的な病気としては「風邪」があげられます。初めはゾクゾク寒気がしていたのに、2~3日後には寒気が無くなり発熱と熱感へ、また数日経つと今度は鼻水や咳が出てきて・・・というように数時間~1日単位で症状が変わりますが、これが「証」の変化です。初めにゾクゾク寒気がするのは、風寒邪が肌表を侵襲し、正気と邪気が戦っている状態です。このときの証は「風寒表証」といい、風寒の邪気を外に追い出す働きがある辛温解表剤(桂枝湯・葛根湯など)を用います。ここで風邪を追い出せたら、その先には症状が進まずに治りますが、体内に入ってしまい、邪気が鬱して化熱してしまうこともあります。そうなると「証」が変わり、もう辛温解表薬を使う時期ではありません。例えば「寒鬱化熱証」に使う柴葛解肌湯などに変えなければなりません。

また、漢方の治療の原則は「急性病を先に治す」ということです。風邪をひきやすい体質を改善することと、今ひいてしまった風邪を治すことは治療が異なります。風邪をひきやすい体質には、例えば「補中益気湯」など気を補う漢方薬が使われますが、風邪をひいているときに「補中益気湯」は使いません。変化する「証」に応じて風邪を治療する漢方薬を使います。むしろ、「風熱表証」のときに「補中益気湯」を飲んでいたら、辛凉解表薬の効き目を悪くしてしまいます。

なので、ある漢方薬が効かなかった(または好ましくない作用が出た)からそれは自分の体質に合わない・・・と患者さんが仰る場合、その時の「証」に合ってない方剤を使った可能性もあります。ある患者さんは下痢しやすい体質(脾気虚証)で、皮膚の熱毒をとる「黄連解毒湯」は下痢をしてしまい飲めなかったのですが、下痢をしなくなるように体質改善をしてから服用したら、全く問題なく肌の調子も良くなったということがあります。

そのようなことがあるので、漢方薬を服用して合わなかった場合、なぜ合わなかったのか?を検証する必要があります。上記の様にその時の「証」と使った漢方薬が合っていなかったことが原因のこともありますし、東洋医学の「証」とは関係なく特定の薬草が合わない体質の場合もあります。(例えば麻黄で動悸が出やすい人、特定の種の植物にアレルギーを持っている人など)

相談の時に、どんなときにどんな漢方薬を使って合わなかったのかを教えていただけると、漢方薬を選ぶ際の参考になるので、名前を覚えておきましょう。