2024.11.9
生理痛があるのは普通のこと・・・と思っている方は多いですが、東洋医学的には生理痛はないのが正常です。
生理痛の体質にもいくつかありますので、漢方薬を使う際にはその体質に合ったものを使ってください。ここでは、よく使われる漢方薬を紹介してみたいと思います。(ここで紹介したものが全てではありません)
【瘀血証に使う漢方薬】
瘀血証は古血が滞った病態で、さまざまな慢性病の原因となります。婦人科では瘀血によって、子宮の血行不良を起こしたり、組織の癒着、筋腫のような塊ができます。瘀血証にも細かく分類すると、気滞を伴う気滞血瘀、気虚で血が流れない気虚血瘀、瘀血なのに血も足りない血虚瘀血、痰湿が血流を阻害している痰湿血瘀などがありますので、体質に合わせて組み合わせる場合が多いです。
≪桂枝茯苓丸≫ 桂枝・茯苓・牡丹皮・桃仁・芍薬
瘀血証に使う代表的な漢方薬です。寒性の活血薬である牡丹皮が配合されているので、全身冷えている人よりは、冷えのぼせの体質に向いています。臨床ではこの処方単体で使うというよりも、他の処方と合わせて活血を強める目的で使うことが多いです。茯苓には利湿作用があるので、瘀血と水分代謝が悪い体質の方に向く処方です。
≪桃核承気湯≫ 桃仁・桂皮・甘草・芒硝(硫酸マグネシウム)・大黄
桂枝茯苓丸の体質よりも瘀血症状が強く、便秘がちな方に使う漢方薬です。桃核承気湯には、下剤の作用がある大黄が入っていますが、便秘があると直腸内の糞便が子宮周辺部の組織を圧迫して瘀血を起こしますので、通便させると痛みが楽になります。体質改善のために長期で飲むという処方ではなく、通便後に痛みが軽くなったら、桂枝茯苓丸などの下剤が入っていない処方に切り替えます。桃核承気湯と似たような体質に使う漢方薬には、他に通導散(当帰・大黄・芒硝・枳実・厚朴・陳皮・木通・紅花・甘草・蘇木)などがあります。通導散には、気を巡らせる生薬が配合されていて、気滞血瘀に使われます。
≪折衝飲≫ 桃仁・紅花・牛膝・牡丹皮・芍薬・当帰・川芎・延胡索・桂枝
折衝飲は気を巡らせる利気薬と活血薬の組み合わせで、瘀血を去る配合です。当帰を加えることで補血作用もあります。通導散のように下剤の作用もなく、幅広い瘀血症に使えるバランスの良い方剤ですが、残念ながらあまり知られていません。恐らく、エキス顆粒が製造されておらず、煎じ薬限定になってしまうからだと思いますが、味も比較的飲みやすいので、もっと見直されてもよい方剤です。似た方剤には、牛膝散があり、これは折衝飲から紅花・川芎を抜き、木香を加えた方剤です。作用的に大きな違いはありませんが、折衝飲より少し活血作用を弱め、木香で利気作用を強めたと言えるでしょう。折衝飲により多くの生薬を足したのが芎帰調血飲第一加減で、香附子・烏薬・陳皮・乾姜・白朮・茯苓・大棗・炙甘草・枳実・木香・益母草を加えたものです。生薬がたくさん入っていると作用が強い薬のように感じられますが、脾虚を補う生薬を足しているので、より虚弱者に用いる活血薬になります。
【血虚証に使う漢方薬】
血虚証は文字通り血が足りない体質です。現代医学で言う貧血とも似ていますが、検査で貧血を指摘されなくても血虚証に当てはまる方はたくさんいます。まぶたの裏や舌が白っぽい、肌つやが悪い、髪が抜けやすい、爪が弱い、生理の後半に体調不良が多いなどの特徴があります。血虚が主な体質でも同時に瘀血症の方もいますので、生理痛の場合、活血作用の生薬も少量は組み合わせることが多いです。
≪四物湯≫ 当帰・芍薬・川芎・地黄
四物湯は基本の補血薬で、様々な補血作用がある漢方薬のベースになっています。この中で川芎だけは補血薬ではなく、活血薬になりますが、3つの補血薬と組み合わせることで新しい血を補って巡らせるという目的があります。四物湯だけで使う場合もありますが、血虚証の人は同時に脾気虚などを伴う場合があり、若干消化に重い地黄が入っているので、白朮や陳皮などと合わせて消化吸収しやすくして使うことも多いです。例えば、十全大補湯は四物湯に人参・白朮・茯苓・桂皮・甘草を加えた方剤で、気血不足の体質に用います。他、生理周期の不定愁訴に使われる加味逍遙散に四物湯を足した加味逍遙散合四物湯は、加味逍遙散の体質よりも血虚の症状が強い方に用いられます。瘀血の血虚証に用いる桃紅四物湯は四物湯に桃仁・紅花を加えた処方です。このように様々な方剤の補血薬としてのベースに使われるのが四物湯なのです。
≪当帰芍薬散≫ 当帰・芍薬・川芎・茯苓・沢瀉・蒼朮(白朮)
婦人薬として最も知られている漢方薬です。血虚証にむくみやすいなどの水滞症状を伴う体質に用いられます。四物湯に含まれる地黄は滋潤作用があり、茯苓・沢瀉・蒼朮の利湿作用を妨げるので入っていません。当帰芍薬散には、水性抽出エキスの当帰芍薬散料と薬草そのものの粉末を用いる当帰芍薬散がありますが、薬草の配合比が異なり、古典に忠実なのは当帰芍薬散になります。経験的には、水分代謝を改善する利湿作用は、当帰芍薬散の方が優れているように感じます。水滞症状があまり無い方には、当帰芍薬散から茯苓・沢瀉を抜き、黄芩を加えた当帰散を用います。どちらも妊娠中の安胎薬としても用いられる方剤です。昭和の有名な漢方治療家、荒木性次氏は当帰散について「お産を軽く済まし得ること神の如し」と推奨されています。妊娠中はお薬の服用について慎重になる方が多いですが、漢方薬の中にはとても役立つ方剤もあるのです。
生理痛の改善の目安は、漢方薬を服用してほとんどの方が3ヶ月以内に効果を感じられると思います。ただし、生理の直前から飲み始めた場合、瘀血が溜まった状態で生理が始まるため、いつもより痛みが強く感じられることもあります。生理痛が重い方は、できれば2週間以上前から飲み始めた方が良いかもしれません。1回目の生理が重くても、2回目からは軽くなりますので、不安に思わずに続けてください。
生理痛は軽度~中程度の方なら、半年しっかり飲めばかなり良くなります。今まで半年以上きちんと服用しても効果が全く無かった方は、ごく数名です。治りにくいケースは「子宮腺筋症」「子宮内膜症」の症状が進んだ方でした。しかし、そのようなご病気があっても、ほとんどの方は漢方薬を服用する前よりも症状は軽くなっています。生理痛でお悩みの方は是非漢方薬を服用してみてください。(ただし、飲んだり飲まなかったりでは良くならないので、毎日真面目に服用することが大切です!)
当薬局では、お客様との対話を通して、一人一人の体質や生活習慣に合った漢方・健康養生法をご提案いたします。
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