2024.11.29
ポリファーマシーという言葉を聞いたことがあるでしょうか?薬の多剤併用による有害事象のことを指します。
元々は、年齢と共に病気が増え、その治療薬による多剤併用が問題視されていたので、高齢者についてのポリファーマシーが研究対象とされてきました。しかし、近年は子どもの医療費無償化もあり、小児のポリファーマシーが指摘されるようになっています。
ちょっと鼻水が出る、咳をしている、そのくらいで簡単に病院にかかり、薬を飲ませていませんか?風邪の原因はほとんどがウイルス性なので、抗生物質を服用する意味はありません。それどころか、むやみに抗生物質を利用することで、健康な腸内細菌叢が破壊され、薬剤耐性菌を増やし、より治りにくい病気を増やす温床になってしまいます。
子どもは風邪を引きながら免疫力を鍛えていきます。生まれた瞬間からお母さんの菌や身の回りの菌を取り込んで、悪さをする菌と有用な菌を選別する能力を鍛えながら成長していきます。風邪を引くのは当たり前なので、喘息などの持病がなく、症状が軽ければ慌てて薬を飲ませる必要はありません。
それでも、他の子より風邪を引きやすい、成長が遅い、好き嫌いが多くてきちんと栄養が取れない・・・などのお悩みをもつ親御さんも少なくないと思います。
そんなときには、是非漢方薬も検討してみて下さい。お薬の漢方薬だけではなく、東洋医学の養生も含めて、子どもの体質改善に役立つはずです。
【風邪を引きやすい・虚弱体質など】
風邪を引いたときと、風邪を引いてないときに体質改善で服用する漢方薬は同じではありません。まずは虚弱体質の改善に使う漢方薬を紹介します。
≪小建中湯≫ 桂皮・生姜・大棗・芍薬・甘草・膠飴
この漢方薬の優れたところは、子どもの虚弱体質の改善に非常に幅広く使うことができ、しかも飲みやすいことです。膠飴は麦芽糖の飴玉のことで、薬草を煎じた湯液の中に溶かして使います。なので、甘みがあり、生姜湯のような美味しい漢方薬です。虚弱体質全般、胃腸が弱い、便秘しやすい、夜泣き、神経質、夜尿症など子どものお悩みのほとんどに使えると言ってもいいかもしれません。子どもはガマンして薬を飲むことは苦手ですから、飲みやすいのは大きなメリットです。「他の方剤にしようかな・・・」と多少思いつつも、飲みやすさを重視して、小建中湯を使うということはよくあります。
≪瓊玉膏≫ 生地黄・人参・茯苓・枸杞子・沈香・ハチミツ
こちらは、こしあんのような甘くて美味しいおやつのような漢方薬です。味だけで比較すれば、小建中湯よりも美味しいでしょう。生地黄が入っているので、下痢をしやすい体質には向きませんが、虚弱体質の改善には最適です。添付文書の適応が8歳からになりますので、小さなお子様がご利用できないのは残念です。
※風邪をひいたときの漢方薬の選び方は、基本的には大人の場合と同じです。症状によりますので、ご相談ください。
【疳の虫・夜泣き】
疳の虫とは、昔の人が子供がわめいたり、ぐずったりするのを体の中にいる虫のせいと考えていた名残りです。子供は大人のように言葉で気持ちや体調についてうまく説明することができないので、何かの不調のサインである場合もあります。また、栄養不足でも夜泣きや疳の虫が出てくる場合がありますので、特に離乳食への切り替えから栄養が偏ってないかも見直してみてください。
≪抑肝散≫ 当帰・川芎・茯苓・白朮・柴胡・甘草・釣藤鈎
この漢方薬は昔から疳の虫によく使われてきた処方で、特に育児疲れのお母さんと一緒に服用「母子同服」することで知られています。抑肝散はイライラを穏やかにしますので、親子で飲むことでより効果が発揮されるのです。苦い薬草は入っていませんが、当帰や川芎は独特の香りがあります。上記で紹介したような美味しい漢方薬ではありませんが、飲めない子は少ないように感じます。
※漢方薬を飲みやすくする方法
子供に薬を飲ませる場合、飲み物や服薬ゼリー、アイスクリームなどに混ぜて飲ませることが多いと思います。漢方薬の場合、酸味と相性が悪いので、フルーツ系の味と混ぜると余計にまずくなります。相性が良いのは、ほんのり苦みがあり良い香りのココア味やチョコレート味で、漢方薬用の服薬ゼリーにもチョコレート味が多いのはそのような理由からです。服薬ゼリーを使わなくてもココアパウダーを少し入れることで飲みやすくなります。ただし、体質によってはココアやチョコレートが悪影響を与えることがあるので、大量には使わない方がよいです。
【夜尿症】
小学生・中学生になってもおねしょが良くならないという相談は意外と多いです。東洋医学的には先天の精が不足していて、腎が弱い体質と考えられます。精は生命力の源なので、不足すると虚弱体質になったり、成長発達や歯の抜け変わりが遅いといった症状も伴うことがあります。食養生では、魚介類やスッポン、骨のスープなどが腎の栄養補給におすすめです。また、精神的なストレスから起こる夜尿症もあります。夜尿症で子供を叱ってしまうと余計に治らなくなります。無意識に夜尿になってしまうのですから、本人が一番悩んでいます。怒らずに見守ってあげてください。
≪六味地黄丸≫ 地黄・山茱萸・山薬・沢瀉・茯苓・牡丹皮
効能・効果は「疲れやすくて尿量減少または多尿で、ときに口渇があるものの次の諸症:排尿困難・頻尿・むくみ・かゆみ」となっていて、現代では高齢者によく使われる方剤ですが、もともとは小児の腎症にもちいる処方でした。〇〇地黄丸はいくつか種類がありますが、そのベースとなるのが六味地黄丸です。補腎薬としては比較的穏やかな漢方薬なので、明らかに腎虚の症状がある場合、もっと補腎作用が強い生薬を使う必要があります。
≪桂枝加竜骨牡蠣湯≫ 桂皮・芍薬・大棗・生姜・甘草・竜骨・牡蠣
夜尿症以外に神経質・不眠症・夜泣き・眼精疲労などにも使われる漢方薬です。補腎の漢方薬ではなく、気が不安定で興奮しやすい体質に用います。竜骨・牡蛎は浮ついた気を降ろす作用の他、収斂固渋作用があり、体液が漏れ出るのを防止します。
ここで紹介した以外にも様々な漢方薬が子供の体質改善に役立つと思います。治療薬で病気を治すことだけではなくて、身体そのものを強化していくことに貢献できるのが漢方薬のメリットです。
当薬局では、お客様との対話を通して、一人一人の体質や生活習慣に合った漢方・健康養生法をご提案いたします。
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