2025.3.3
冷え性は病名ではありませんが、体質としては辛い症状の一つです。
一言に冷え性と言っても、そのタイプは様々あって、治療方法は異なります。全然冷え性が良くならない場合は、あなたの冷え体質に合っていない、もしくは薬草の量が足りない、薬草の作用が弱いなどが考えられます。
ここでは、いくつかの冷えタイプに合った漢方薬と養生法を紹介します。
【気血不足】
血そのものは陰に属するので温める働きはありません。陽気の働きで血を温めているのです。気血は一緒に働いて循環していますので、血が足りない冷え性の方は、気血の両方を増やす必要があります。月経のある女性は、何も対策をしていなければほとんどの方に血不足があります。血が足りない体質の特徴は、肌色が青白い、乾燥肌、爪が弱い、髪が抜けやすい、目が疲れやすい、睡眠の質が悪い、傷の治りが悪い、月経が遅れる、忘れっぽい、不安症・・・といったことがあります。気不足では、疲れやすい、日中に眠くなる、だるい、やる気がでない、胃腸が弱い、風邪を引きやすい、汗をかきやすい・・・などです。
冷え性の改善に生姜やシナモン、スパイス類など辛いものを常習的に摂取して改善しようとする方が多くいらっしゃいます。このような辛みのものは体内の寒邪を発散させて冷えを取り除くものです。気血不足の方が、補気補血をせずに辛いものばかり摂取していると気血は消耗していきます。冷え性が良くなってきたと思ったら、今度は手足の火照りが出てきます。手足が温かくて気持ちが良いのではなく、火照って不快感があり、冷たいところで冷やしたくなったり、布団から足を出して寝たくなるという感じです。気血不足の方は、辛みのものだけでは無く、補気・補血作用がある食材や漢方薬を併用しなければなりません。
気血不足には、気血が両方とも同じくらい少ない方、どちらかというと気が少ない、または血が少ない方に分かれます。それは検査で分かるものではないので、患者さんの訴えから推測します。
補中益気湯は、気を補うことで良く知られた漢方薬ですが、当帰や大棗など補血作用がある薬草も入っているので、気血両方を補う目的でも使えます。胃腸の気を補うことを目的としていますので、胃腸が弱くて、気血を補いたい冷え性の方に使いやすいと思います。温める働きを助けるために、シナモンパウダーを少量溶かした湯に一緒に溶かして服用するのもよいでしょう。
帰耆建中湯は一般的にはあまり知られていないかもしれませんが、補気・補血ができる漢方薬です。構成生薬の黄耆は身体の表面を守る衛気を補います。補中益気湯よりも当帰や大棗の量が多いので、より補血作用は優れています。味も甘めで美味しく、飲みやすい漢方薬です。
【陽気不足】
気不足のうち、特に温める働きが低下して強い冷えを感じる状態です。気には大きく分けて5つの働きがあり、血や津液の流れを促進する「推動作用」、精から血・気から血など物質を変換させる「気化作用」、血や津液など必要な体液が外へ漏れ出ないようにする「固摂作用」、体内へ病邪が入り込まないように守る「防御作用」、体温を一定に保つ「温煦作用」があります。これらの作用は4つの気が担っているのですが、症状によって補気する薬草の種類は変わります。なかでも「温煦作用」が失われている場合を「陽気」が足りないと考え、補陽作用がある生薬を使います。症状としては、気血不足の体質よりも元気がなく、強い冷えを感じるようになります。「気血不足」と「陽気不足」の違いを数値化することはできないのですが、例えば夏でも冷えを感じやすい、冷たいものの飲食は絶対に避ける、足腰の芯から冷えを感じるなどが目安の一つになります。気血不足がさらに悪化して陽気不足になると考えるとイメージしやすいでしょう。
この場合、補気薬だけでは作用が弱いので、補陽薬を使います。代表的なものは鹿茸で、これは生えたての柔らかい鹿の袋角です。動物性の生薬は少量でも効果が高いので、植物性の漢方薬だけでは改善しにくい場合には併用すると良いです。鹿茸には血を増やす働きもあります。
鹿茸を使った漢方薬は保険適応がなく、当薬局では「霊鹿参」や「活命参」、「参茸補血丸」、「海馬補腎丸」などをご紹介しています。
【寒凝・寒湿など冷える邪気】
冷える格好をしていたり、寒い環境で外から寒邪が入り込む場合と、陽虚から内因性の邪気が生まれ、水が溜まって冷えやすくなる場合などがあります。むくみがあるとその水が身体を冷やすので、利水作用がある生薬を使わなければなりません。この冷えは痛みを起こすことも多く、関節痛や腰痛があったり、足が水につけたように冷えて痛むという方もいらっしゃいます。このような強い冷えには温裏薬の「附子」「呉茱萸」「細辛」などを使います。
「附子」はトリカブトの子根なので、驚く方もいらっしゃいますが、もちろん減毒する加工をしたものが生薬として流通されていますので、ご安心ください。近年、附子には神経障害性疼痛を緩和する働きが確認され、抗がん剤治療による手足末端の痛みやしびれ、帯状疱疹後神経痛などに附子が入った漢方薬が使われています。
桂枝加苓朮附湯、八味地黄丸、真武湯などは附子が入った代表的な漢方薬です。桂枝加苓朮附湯は、冷えると痛む関節痛に、八味地黄丸は足腰の冷えから来る排尿のお悩みによく用いられます。真武湯は冷えて悪化する下痢などの胃腸症状に用いる漢方薬です。
呉茱萸や細辛も温めるだけではなく痛みにも効果がある生薬です。当帰四逆加呉茱萸生姜湯は、手足の冷え、特にしもやけに使う漢方薬です。四逆というのは、四肢が逆冷する(手足の末端から冷えていく)という意味です。末端冷え性で、頭痛や腰痛があったり、腹痛になりやすい体質に用います。温める作用が強い生薬を長く服用する場合は、血や津液を損傷しないように補血薬や滋陰の生薬を併用した方がよい場合もあります。
【瘀血】
冷えるけどのぼせる、冷え性なのに暑がりという体質の方は、瘀血体質が多いです。血だけでは温める働きがないので、瘀血体質で全身冷えるということはあまりなくて、血の流れが悪いことで、気が全身を循環できず、上半身など身体の一部に停滞してしまうので、冷えるのに暑がりという矛盾した体質がでてきます。この体質の方は、温める作用が強い生薬はのぼせが強く出やすいので、まずは血の循環を良くする活血薬を使います。
冷えのぼせに使う代表的な漢方薬は桂枝茯苓丸ですが、活血薬としては比較的穏やかな作用です。より血を巡らせる作用に優れているのは、折衝飲や牛膝散、芎帰調血飲第一加減などがあります。瘀血の方は、肩こりや生理痛、頭痛などを伴うことも多いので、冷え性以外の症状・体質も考えて漢方薬を決めることになります。
漢方薬だけでなかなか冷え性が改善しない場合は、栄養状態も確認してみる必要があります。朝食を食べない、加工食品が多いと、エネルギー代謝に必要な栄養素が不足します。特に低体温症の方は、ミトコンドリアのエネルギー産生が出来ていないことが考えられるので、ミトコンドリアが活性化するための栄養素をきちんと摂取し、活性酸素を除去する抗酸化物質を充分摂らなければ、漢方薬だけずっと飲んでいてもなかなか解消されません。ミトコンドリアが活性化するための栄養素はビタミンB群や鉄・マグネシウム、亜鉛などのミネラルです。また、体温の維持には筋肉も必要なので、タンパク質も摂らなくてはなりません。
せっかく漢方薬を飲むのであれば、食生活も改善して、最大限に効果が出るように養生するのが早く安く体質改善するコツです!
当薬局では、お客様との対話を通して、一人一人の体質や生活習慣に合った漢方・健康養生法をご提案いたします。
※病院のお薬をご利用中の方はお薬手帳をお持ちください。
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