ホーム > ブログ > 風邪・鼻炎・呼吸器の症状 > 咳の症状に使う漢方薬
2024.5.8
風邪のあと、咳だけが続いて辛い・・・というお悩みは、皆さんご経験あると思います。
2ヶ月以上、咳が続く場合、「咳喘息」と診断され、ステロイドの吸入薬や気管支拡張剤などを使って治療することもあります。
咳が出る風邪は、長引くことが多いので、早めに対処しておくことが大切です。
また、風邪に限らず、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や、喘息など、様々な原因による咳にも、漢方薬がよく効くことがあります。
咳に使う漢方薬も、体質や咳の性質による使い分けが大切ですので、いくつかご紹介したいと思います。
咳をしたときに、痰が絡むような咳なのか、乾いた咳なのか?は、漢方薬を決める判別の一番のポイントになります。例えば、痰が多い咳にノドを潤す作用の生薬を使うと痰が増えて苦しくなってしまいますし、逆に乾いた咳に痰を減らす作用がある燥性の生薬は余計に乾いてしまい、咳が止まりにくくなってしまいます。
痰がある場合は、痰が水っぽくて多いのか、粘っこくて多いのか、へばりついてノドから出てこない痰なのか、痰の状態も重視します。
水っぽい痰の場合は、冷えた湿の性質、黄色く粘る痰は熱を持った性質・・・といった違いがあります。
市販薬にもあって、良く知られている咳の漢方薬と言えば、麦門冬湯でしょう。コンコンという乾燥したような空咳や、粘って出てこない痰の咳に使われます。処方構成は、麦門冬・半夏・大棗・人参・甘草・粳米となっています。方剤の名前にもある麦門冬が主薬で、肺を潤す潤肺作用があります。潤すことで粘膜を保護したり、粘った痰を吐き出させやすくします。半夏は気を降ろして咳が出ないようにする働きがありますが、麦門冬とは逆に燥性がありますので、潤す作用を減弱してしまうことがあります。大棗・人参・粳米は、滋養のために配合されています。
麦門冬湯から大棗を抜いて、竹葉と石膏を足したものが竹葉石膏湯です。竹葉と石膏は清熱作用があり、また石膏は乾きを止める働きがある生薬です。舌や痰が黄色かったり、口の渇き、熱感を伴う空咳には麦門冬湯よりこちらの方が良いでしょう。石膏は胃を冷やすので、胃腸が冷えに弱い方は不向きの場合があります。
他に空咳に使う漢方薬には、滋陰降火湯があります。こちらは、当帰・芍薬・地黄・天門冬・麦門冬・陳皮・白朮・知母・黄柏・甘草で構成されていて、半夏は入っていません。乾燥感が強く、潤す作用を優先したい咳に使います。地黄や天門冬など潤す薬草が増えた分、麦門冬湯よりも潤す働きは強く、また清熱作用がある知母や黄柏が入っているので、熱によって乾燥した空咳、粘る痰に使います。しかし、潤す作用が強くなった分、舌に苔がベットリついている痰湿体質の人や、下痢しやすい人、胃もたれしやすい人には不向きです。
また、特に激しい咳の場合は、麻黄という生薬が入った漢方薬を良く使います。例えば、五虎湯(麻黄・杏仁・石膏・甘草・桑白皮)や麻杏甘石湯(麻黄・杏仁・甘草・石膏)で、気管支喘息の適応があります。構成生薬を見ていただくと分かりますが、五虎湯は麻杏甘石湯に桑白皮が配合されただけなので、ほとんど同じ処方です。風寒の風邪に使う麻黄湯(麻黄・杏仁・桂皮・甘草)にも似ていますが、五虎湯と麻杏甘石湯には、肺熱を取るための石膏が配合されているので、麻黄湯に入っている桂皮は温める作用によって効果が減弱するので、抜いてあるのが異なる点になります。麻黄には気管支を広げる働きがありますので、気管支が詰まってせき込む場合にはとても有効です。
麻黄が入っている咳の漢方薬は他にもいろいろあり、神秘湯(麻黄・杏仁・厚朴・陳皮・甘草・柴胡。蘇葉)や小青竜湯(麻黄・芍薬・乾姜・甘草・桂皮・細辛・五味子・半夏)などがあります。小青竜湯には、小青竜湯加石膏や小青竜湯合麻杏甘石湯などの合剤もあります。小青竜湯自体は乾姜や桂皮、細辛などが入っているので、麻杏甘石湯とは異なり、肺寒による咳に用います。薄い水っぽい痰が多く出る咳です。ではなぜ、石膏など冷やすものを合わせている方剤があるのかというと、冷えた水(水飲)が化熱して、口渇の症状を伴う場合に小青竜湯加石膏や小青竜湯合麻杏甘石湯を使うのです。
麻黄が入った製剤は、血圧が高くなる場合もありますので、特に高齢の方は気を付けて使う必要があります。
風邪の後の咳というよりも、もっと長く続いていて、慢性的になっている症状の場合は、胃腸の働きや自身の自然治癒力の低下(正気不足)も考慮しなければなりません。
胃腸と咳の症状は、一見何の関係もなさそうですが、胃腸は後天の本と言われ、元気(正気)の源をつかさどる臓器です。また、腸は現代医学でもアレルギー体質と関わりが深いことが分かってきていますので、あながち東洋医学が全く見当はずれな治療をしているわけではないことはお分かりいただけると思います。
他にも咳の症状に応用できる漢方薬はたくさんありますが、長くなりますので、別の機会に紹介したいと思います。
長引く咳、病院の薬での治らない咳にお悩みの方は、是非一度ご相談くださいね。
当薬局では、お客様との対話を通して、一人一人の体質や生活習慣に合った漢方・健康養生法をご提案いたします。
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